虚血性心疾患の話
心筋虚血とは心臓の筋肉(心筋)に十分な血液が供給されないことであり、虚血性心疾患は心筋に血液を送る血管(冠動脈)が狭くなっている、またはつまっていることにより、心筋に十分な血液が供給されない病気です。
簡単に言ってしまえば、冠動脈が狭くなっている状態を狭心症、つまっている状態を心筋梗塞といいます。心臓は血液の中の酸素を利用して動いていますが、冠動脈が狭くなったりつまったりすることで心筋への血流が悪くなると、心筋に酸素が行き渡らなくなり、心筋は酸素不足に陥ります。心筋が酸素不足に陥ると胸痛、不整脈などの症状が出現し、さらに冠動脈がつまってしまうと心筋が酸素不足により壊死をおこし、心臓が止まってしまう場合もあります。
虚血性心疾患の症状はその疾患によって異なりますが、下記の症状を訴える方が多いです。
- 胸や背中に強い痛みや、圧迫感を感じる。特に運動中、運動後。
- 息苦しさ
- 息切れや胸やけのような症状
- 冷や汗
など。
人によって痛みの感じ方は違いますが、狭心症の胸痛はチクチクするまたは刺されるような痛みとは異なり、どちらかといえば胸が重苦しいと訴えられる患者さんが多いです。また心筋梗塞の胸痛は実際経験された患者さんに聞くと今までに経験したことのない痛みと答えられる方が多いです。一般的に、運動や強いストレスがかかった時に症状は出やすくなるといわれますが、症状が進行すると安静時にも同様の症状が出やすくなります。逆に全く症状のない方もおり、突然死される方も少なくありません。ただどんな胸痛にせよ症状が頻回の場合は医療機関に相談することをお勧めします。
厚生労働省の令和4年度人口動態調査によると、日本の死因の第2位が心疾患と報告されています。その中でも、急性心筋梗塞を含む虚血性心疾患が多くの割合を占めています。
急性心筋梗塞は、発症後48時間以内に35~50%が死亡するといわれています。狭心症のように冠動脈が狭い状態では治療することにより完治を見込めますが、心筋梗塞のように冠動脈がつまってしまった状態では治療しても心臓に何らかの障害を残すこともあり、一生心不全(心臓の機能障害)との付き合いになることもあります。急性心筋梗塞の診断、治療は時間との勝負になることが多く、早期診断、早期治療が強く求められます。動脈硬化に関係する下記の危険因子を持つ方は十分に注意しましょう。
・高血圧 糖尿病 脂質異常症 喫煙 肥満 ストレス 運動不足 家族歴 高齢など。
わらび錦町内科 院長 山本真